いつ何時襲ってくるかわからない災害。自宅でも防犯グッズや避難所の確認など、日頃から行なっている方も多いのではないでしょうか。
しかし、日本は災害リスクが高い国でもあり、災害は出社中や出社直前に襲ってくるかもしれないのです。
たとえば、この記事をご覧の皆さんは、こんなことを考えているかもしれませんね。
- 災害時の出社ルールはなに?
- 災害時でも出社できそうならするべき?
- 災害時に関係ある法律はなに?
そこで今回は、そんな疑問や不安を解消するべく災害時の出社ルールや法律的観点について解説していきます。
詳しくまとめているのでぜひ参考にしてみてくださいね。
- 日本は災害リスクが高い
- 無理な出勤命令に応じる必要はない
- 安全配慮義務を理解し普段の備えを万全にしよう
Contents
日本は災害リスクが高い
先ほどお伝えしたように、日本は災害リスクが高い国です。
主な災害としては、以下のようなものがあります。
- 地震
- 台風
- 火山
- 豪雪
この4つが主なものでしょうか。
ここではこの4つについて最低限知っておきたいことを、ひとつずつお伝えしていきます。
地震
日本は非常に地震が多い国です。
地震大国日本とはよく言ったもので、世界でも日本は地震が多い国第4位とされています。
もっと言えば、世界中で発生する地震の10%は日本で起きており、マグニチュード6を超える地震であれば全体の20%が日本で発生していると言われているのです。
さらに、地震が多いということは必然的に津波のリスクも高くなります。津波の発生の原因はほとんどが地震であるため、地震の揺れと同時に津波への警戒も怠らないようにしたいものです。
台風
近年では台風のリスクも高まっています。夏から秋にかけては台風のシーズンと言われています。
その期間は特に日本に上陸する数が多いのですが、その数と被害は年々多いものになっています。
これは温暖化の影響と言われており、年々海水の温度が上昇していることが原因です。
台風によって多くの雨が降ると、水害や土砂災害のリスクも高くなってしまうので、地震と同様に警戒すべき災害といえるでしょう。
火山
日本には世界の7%ものの活火山が存在しています。
日本の中だけでも噴火ランクAの火山が13個もあり、世界的にも有数の火大国と言われています。
噴火が起こるとその火山の近辺では火山灰の影響が重大なものになってしまい、該当する地域では常に花壇のリスクを考えておく必要があります。
豪雪
世界でも降雪量の多い都市ランキングで、青森市・札幌市・富山市が上位3位を占めています。これによって、日本は豪雪国と認知されているのです。
しかし、一部の地域を除き国内ではあまり認識が行き届いていないのが現状。
特に、東京都心は雪に対する防災が整っていないため、ひとたび豪雪被害を受けると想像以上の大きな被害につながるケースも過去にありました。
知っておくべき災害時の企業の出社判断は?
従来のBPC(事業継続計画)は、勤務中の被災を想定したものであり、勤務時間帯に災害が生じた場合の出社判断はその盲点となっていました。
最近でも、災害時にSNSやニュースでも話題になるのは「その時に」出社するかどうかの判断です。
企業が出社と指示を出してしまった場合は、従業員としては出社を試みるでしょう。
しかし、その場合、交通機関の麻痺によって帰宅困難になってしまうケースもあります。
つまり、指示を出す企業側と従業員側の双方が、災害時の出社判断が正しいかどうかを判断できなくてはならないのです。
一般的な出社を命じる判断基準としては、以下のようなものがあります。
- 必ずその日のうちに社員を出社させて対応させるべき業務があるかどうか
- 取引先との交渉を行い翌日以降に納期やアポイントを延期させることができないか
- 出社した社員が帰宅困難者になる恐れはないか
- 災害対策本部要員の人数や役割分担に無駄や無理がないか
このように、対策本部から適切な指示が出せる環境で、何が何でも当日に出社して対応させる業務があるかどうかがポイントとなります。
前提として、災害時に社員を無理に出社させない企業の雰囲気作りが必要です。可能であれば、在宅でもできるような働き方に企業がシフトしていく必要もあるでしょう。
災害時の企業対応事例
2019年10月に日本を襲った「台風19号」の際には下記のようなツイートが話題になっていました。
「超大型台風の襲来」も恐ろしいが、「台風の危険性がこれだけ指摘されてるのに出社強要するブラック企業」はもっと恐ろしい… お前らが出社させるから、保育士さんが危険を冒して登園を強いられたりするんだ。早く滅びろ。
そんな中でも出勤されるインフラ・現業系の皆さま、くれぐれもご安全に…!! pic.twitter.com/Hvevg35CZY
— ブラック企業アナリスト 新田 龍 (@nittaryo) October 11, 2019
このような対応をする企業もあるようです。
ここからは、災害時に企業が実際に行なった対応事例を紹介していきます。実際に行なった対応としては主に以下の3つに当てはまるようです。
- 出社を求めたケース
- 帰宅を促したケース
- 従業員個々の判断に委ねたケース
ひとつずつ解説していきます。
出社を求めたケース
出社を求めたケースでは、顧客対応の部署は原則出社というルールがありました。このルールに従い、安否が確認できた従業員には出社を求めていたのです。
しかし、実際に出社できたのは半分程度。さらに、実際に出社したものの、顧客からの問い合わせは少なくかったようです。
帰宅を促したケース
帰宅を促したケースでは、企業独自の防災マニュアルを策定していました。そのマニュアルにそって、社員の安否を確認した後自宅待機を指示したのです。
出勤中の社員には速やかな帰宅、すでに出社した社員に対しても交通機関が復旧次第に帰宅するように指示を出していました。
従業員個々の判断に委ねたケース
従業員個々の判断に委ねたケースでは、災害発生直後に社員に対して安全を考慮しつつ出社の可否を判断するようにと通知しました。
出社が困難な社員には、必要に応じて在宅勤務への切り替えや有給の取得を促すことも。
すでに出社した社員で、帰宅困難が予想される場合は早退を促し、既に帰宅が難しい場合は非常食や毛布を用意して会社に宿泊することも可能にする対応をとっていました。
ほかにも、以下のように前日に従業員に安全を優先して、休業を決定した大手企業も最近では多く見られるようになっています。
セブンイレブン1000店休業へ(台風19号) 2019年10月11日 https://t.co/JXwJXLHLdz
— 黒山秀樹 (@yamimi998) October 12, 2019
災害時出社命令には従うべき?
上記のように、災害時の対応は企業によってさまざまなケースが考えられます。
しかしながら、実際のところ、災害時に出社命令が会社から出た場合は、それに従うべきなのでしょうか?
原則として会社は雇用している労働者に対して出社を命じる権利である「業務命令権」があります。これは雇用関係であれば、企業が持っている権利なのです。
また、労働者はその命令に応じる義務があり、もし違反をすれば会社による注意や懲戒処分といったケースもあります。最悪の場合は解雇の対象となることもあるのです。
とはいえ、これはあくまで原則。
災害によって出社すると命や身体に危険がある場合はその限りではありません。
では、もし出社を強要された場合は法律的にどうなのか、といった部分を次に解説します。
出社強要は法律的に問題ないの?
結論から言うと、会社の上司が「何が何でも出勤しろ」だとか「注意をして出勤はしなさい」と強要しても、必ずしもそれに従う必要はありません。
これは労働契約法で定められており、会社には安全配慮義務があることが根拠になります。
この安全配慮義務は、会社は労働者の命や体の安全を配慮する必要があるといった内容です。
労働契約法5条では以下のように記されています
使用者は、労働契約に伴い、労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮をするものとする。
つまり、地震や台風などの災害によって出社させると労働者の命や身体に危険が予想される場合は必ずしも命令に従う必要はないのです。
たとえば、災害時であれば倒壊した建物の下敷きになってしまうことや、火災に巻き込まれることも考えられます。
にもかかわらず、そういった命令をした会社に対しては、この安全配慮義務違反が追求されます。
また、この安全配慮義務違反によって怪我をしたり死亡してしまったりした場合は、会社にとっても次のような損害があります
- 治療費や通院交通費
- 休業損害
- 慰謝料
上記のほかにも、このようなことがあれば企業の価値も下がってしまいます。
つまり、災害時に安全配慮義務違反をすることは、企業にとっても従業員にとってもメリットがありません。
情報収集や状況把握に努め、労働者の安全を守るような業務命令を企業は出す必要があるのです。
ちなみに、この出社できない状況の場合でも、働かなければ給与をもらうことはできません。「ノーワークノーペイの原則」があり、災害で出社できない状況であっても働いていない以上給与ももらえないのです。
ただし、働けない原因が会社側にある場合は給料をもらえるケースもあります。
復旧が進み、安全面に問題なく労働ができる場合は、会社の都合や取引先の都合で仕事がない状態でも給与が請求できることもあるのです。
従業員がとるべき具体的な行動は?
ここまでを理解していただいた上で、実際に災害時に従業員が取るべき具体的な行動について解説していきます。
その行動は大きく分けて以下の3つです。
- 途中帰宅する
- 自宅待機する
- 有給休暇を消化する
ひとつずつ解説していきます。
途中帰宅する
通勤の途中で地震といった予想できない自然災害にあってしまった時は、通勤を続けるより自宅に帰宅した方がベターなケースがあります。
安全配慮義務の観点から危険に直結する通勤をするよりも、途中帰宅した方がいいでしょう。
自宅待機する
途中帰宅をした場合や、通勤前であれば自宅待機が適切です。
状況によって危険がなくなれば出社命令に応じるべきですが、津波や火災といった二次災害が予想される場合はその限りではありません。
また、自宅待機をしていれば必要に応じて、避難所への避難も可能になります。
有給休暇を消化する
被害の大きい自然災害の場合は数日間欠勤する場合があります。ただし「ノーワークノーペイの原則」によって、欠勤はその期間の給与が出ないことも。その辺りは、会社へ問い合わせを行っておいた方が良さそうです。
もし、給与が出ない場合は有給休暇を利用しましょう。有給休暇は労働者に取得する権利があるので、企業は取得の拒否ができません。
「災害によって混乱状態にある」ということを考慮した連絡をすれば、ほとんどの場合は快く有給休暇は取得できるでしょう。
リスクがあるなら身を守ることを最優先にしよう
このように、日本ではさまざまな災害がいつ起こるか予想ができません。ただでさえ、災害時は心の余裕や調べる余裕がないものです。
災害時の大前提は「出勤にリスクがあるなら身を守ることを最優先にすること」。
この記事を参考に、災害時に無理な出勤をすることなく、日々の防災準備に取り組みたいですね!